大妻女子大学英語教育研究所 The Institute for Research in English Education

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研究所だより

18号(2021年夏号)英語 e-learning システムを活用した英語学習

服部孝彦


「研究所だより」18号からは、本学の学生が英語 e-learning システムを活用して英語学習をするときに役立つ内容についての連載をします注)。


現在、本学に限らず多くの大学に、学生がいつでもどこでも利用できる英語 e-learning システムが導入されています。正規の授業における英語指導だけでは学生の英語力を伸ばすことは困難です。絶対的な英語学習時間を増やす可能性の一つとして、授業外の e-learning を利用する方法が考えられます。英語力向上に必須とされる学習時間の確保を e-learning によって補えることは学生にとっては大きなメリットです。しかし e-learning には課題もあります。教員や学生仲間とのかかわりが少なく、高い意欲や動機づけが養われていない限り e-learning の学習は継続が困難です。この連載では e-learning の問題点とその改善方法を検討し、本学における e-learning システムを活用した英語教育発展の可能性を考えます。


近年、教育分野における情報コミュニケーション技術(ICT)普及を背景として、高等教育の e-learning を活用した取り組みが増加しています。本学では、英語教育研究所が中心となり、グローバル化の動きに対応して、全学的な英語力の向上を共通認識とし、2018年7月から全学の学生が利用できる英語 e-learning システム「スーパー英語 Academic Express 3」を導入しました。本研究所では様々な英語 e-learning の中から内容を慎重に検討し、最終的に英語e-learningツールとしてエル・インターフェース社の提供する Academic Express 3 を選定しました。その理由は大きく2つあります。1つ目は、全国100以上の大学が採用し、35万人以上の大学生が使っているという実績であるということです。2つ目は、教材における自然科学、社会科学、人文科学などのアカデミックなコンテンツの豊富さです。e-learning の教材の中には、TOEIC、TOEFLiBT、IELTS 等の英語検定試験の点数を上げることを主目的としたものも多くあります。しかし、大学で英語を学ぶ意味を考えると、教材は知性を磨くものでなくてはなりません。グローバル化した、多文化共生のこれからの社会を生きる本学の学生たちにとって、英語は語学スキルだけではありません。英語のスキルと豊かな人間性を育む教育を実現する必要があります。また教員や学生仲間とのかかわりが少ない e-learning では、教材が興味深いものでなければ継続的な学習は困難です。その点では、学生の知性を磨く大学らしい教材を多く含む Academic Express 3 であれば、学生の自学自習の継続を促すことができると考えました。


英語 e-learning は、本学の学生、教員、職員であれば、だれでも自由に利用ができます。また英語 e-learning は、外国語科目の英語の授業をはじめ、様々な授業でも活用されることが期待されています。本研究所では、導入直後から学生向けの説明会と教職員向けの説明会を実施してきました。また学生、教職員からの要望による個別の説明会を、いつでも実施できる体制を整えています。本研究所所長(筆者)による英語 e-learning を使った公開授業も定期的に実施しております。全学への e-learning 導入からまだ3年ということもありますが、現在本学では、残念ながらごく少数の教員しか授業で英語 e-learning を取り入れていません。 現在筆者は、担当クラスのレベル・目的に合った問題を Academic Express 3 にある教材からピックアップしたり、あるいは独自に作成したりして、期限付きの課題として学生に e-learning システム上で配信しています。このことを定期的に行うことにより、学生の学習習慣を定着させることができるからです。 Academic Express 3 には教員が簡単に学生のための教材を作成し、それを管理者用のコンテンツに保存することができます。教材は他の教員(管理者)とも共有できるので、将来的には、本学全体、あるいは学部別、学科・専攻別の特徴を反映した、一貫性のあるコンテンツを打ち出し、本学ならではの英語教育へと発展させることがでます。そのために、学生への英語 e-learning の一層の利用を促すと共に、教員の授業での利用も促す契機とすべく、英語 e-learning研究に取り組んでおります。


注)英語 e-learning の研究にあたっては、日本言語文化学会の協力、及び本学戦略的個人研究費、共同研究プロジェクトの助成を受けました。



著者紹介

服部孝彦(はっとり・たかひこ)

本研究所所長、本学教授。

初等・中等・高等教育を日米両国で受けた元帰国子女。言語学博士(Ph.D.)。大妻女子大学助教授、米国ケンタッキー州立ムレー大学(MSU)大学院客員教授を経て現職。早稲田大学講師、米国セント・ジョセフ大学客員教授を兼務。国連英検統括監修官、JSAF-IELTS アカデミック・スーパーバイザー、文部科学省SGH企画評価会議およびWWL企画評価会議メンバーとして、我が国のグローバル化推進の中心として活躍している。元NHK英語教育番組講師。著書に文科省検定中学英語教科書『ニューホライズン』(共著、東京書籍)ほか、著書は180冊以上。日本に本拠地を置く現在でも日米間を頻繁に往復しながら、米国の大学での講義・講演、国際学会での研究発表を精力的にこなす。