大妻女子大学英語教育研究所 The Institute for Research in English Education

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研究所だより

21号(2022年春号)e-learning の定義と特徴

服部孝彦


 「研究所だより」20号では、これまでの e-learning の歴史について述べました。21号では、e-learning の定義、続いてe-learning の特徴について述べることにします。

 e-learning の定義としては次のようなものがあります。

・「e-learning とは、情報通信技術を教育活動に利活用することであり、対面授業のよさを確保することに留意しつつ、対面授業でできなかった学習効果をも追及する新しい教育抱負によって実現する学習のことを指す」(デジタルコンテンツ協議会 (2008))。

・「e-learning とは、ICTを使ったインタラクティブ性のある環境のもとでの学びであり、「学びたいときに」「いつでも」「どこでも」かつ双方向的なサポートのもとに学習することができる教育情報システムのことである」(河村 (2009))。

・「学習者中心のフレキシブルでインタラクティブな環境の中で、情報や教授内容を伝達し、多様なスタイルの学習を支援するインターネットやデジタル技術を活用した学習システム」(鄭他 (2006))。

 e-learning の総合的な定義として、次のものをあげることができます。「e-learningとは、情報技術によるコミュニケーション・ネットワーク等を活用した主体的な学習である。これは、集合教育を全部または一部を代替する場合、集合教育と組み合わせて利用する場合がある。コンテンツは学習目的に従って作成・編集され、コンテンツ提供者と学習者、さらに学習者同士の間で、必要に応じてインタラクティブ性が確保されている。このインタラクティブ性とは、学習を効果的に進めていくために、人またはコンピューターから適切なインストラクションが提供されたり、双方向コミュニケーションが実施されたりすることを指す。」(e-learning白書2007/2008年版)。

 e-learning は学習者中心の、フレキシブルな、多様なスタイルの学習を支援するインターネット技術を活用した学習システムです。e-learning は、いつでも、どこでも、学びたいときに、自分のペースで学習ができるという特徴があります。しかし、これは同時に、いつでも、どこでも、やらなくて済むという意味でもあります。e-learning は孤独感に陥りやすく、学習を続ける動機づけを維持することが難しい学習です。学生の e-learning を成功させるためには、この弱点を補うためのサポート体制が不可欠です。個人学習とはいえ、自主性だけに任せるのではなく、進度が遅れていればそれを指摘し、成績が思わしくなければ学習効果が上がるような指導をする必要があります。学習の進み具合や目標達成度、成績管理はとても大切です。学生個人にとって、自分の学習が現在どこまで進み、設定した目標に対してどのレベルまで達したかを随時把握することができれば学習の励みになります。


参考文献
河村一樹 (2009). 『e-learning入門』. 大学教育出版.
経済産業省商務情報政策局情報処理振興課(編) (2007). 『e-learning白書2007/2008年版』. 東京電機大学出版局.
デジタルコンテンツ協議会 (2008). 『eラーニング:実践と展望』. 産業図書.
鄭仁星、久保田健一(編)(2006). 『遠隔教育とeラーニング』. 北大路書房.

著者紹介

服部孝彦(はっとり・たかひこ)

本研究所所長、本学教授。

初等・中等・高等教育を日米両国で受けた元帰国子女。言語学博士(Ph.D.)。大妻女子大学助教授、米国ケンタッキー州立ムレー大学(MSU)大学院客員教授を経て現職。早稲田大学講師を兼務。国連英検統括監修官、JSAF-IELTS アカデミック・スーパーバイザー、文部科学省WWL企画評価会議メンバーとして、我が国のグローバル化推進の中心として活躍している。元NHK英語教育番組講師。著書に文科省検定中学および高校英語教科書ほか、著書は190冊以上。日本に本拠地を置く現在でも日米間を頻繁に往復し、米国の大学での講義・講演、国際学会での研究発表を精力的にこなす。