大妻女子大学英語教育研究所 The Institute for Research in English Education

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研究所だより

22号(2022年夏号)e-learning の長所と短所、弱点を補う対策

服部孝彦


「研究所だより」21号ではe-learning の定義と特徴について述べました。この22号ではe-learning の長所と短所、そして弱点を補う対策について述べることにします。

e-learning の長所と短所は次のようにまとめることができます。

長所としては
(1) 場所、時間の制約がない、
(2) 個人のペースで学習ができる、
(3) 様々なレベルの学習者に同時対応が可能、
(4) 繰り返し学習が可能、
をあげることができます。

一方で短所は、
(1) 教材のレベルが合わない、
(2) 学習する動機づけが保てない、
(3) 学習者の孤立、
(4) 時間的制約がないために、逆に学習しない、
をあげることができます。

以上の e-learning に関する長所と短所を把握した上で、本学における具体的な Academic Express 3 を活用しての英語 e-learning の弱点をサポートする方法を検討します。

 e-learning の短所 (1) に関して、Academic Express 3 は、個々の学生の英語習熟度レベルごとに様々な教材があるので、学生一人一人が自分の目標を定め、そこに到達できるように自分のレベルに合った教材を使い、学習を進めることができます。まず Placement Test によって、個人の英語力を確認し、判定後に表示される教材から学習を始めれば、最初から自分のレベルに合致した教材で学習を進められます。Placement Test はいつでも再受験ができるので、学生に定期的な受験を促し、自分のレベルの変化を確認するように指導すれば、常にレベルに合った教材で学習を進めることができます。

 英語力はすぐには身につきません。e-learning の短所 (2) に関して、Academic Express 3 には学生個人の英語力や学習記録を一覧できるカルテ機能を備えた My Portfolio があります。ここでは学生個人のスキル別の学習時間をはじめとした客観的なデータをグラフや表で表示してあります。この My Portfolio を活用することにより、自身の学習行動の見直しや、動機づけの維持につなげることができます。Academic Express 3 には Vocabulary、Grammar、Reading、Listening の4つのコンテンツがあります。My Portfolio のスキル別の学習時間を見ることにより、自分の学習の偏りに気づき、学習のバランスを見直すこともできます。学習のバランスに関しては、教員が何らかの形でアドバイスができる体制を構築すれば、より効果的です。

 Academic Express 3 には教員が自分の授業を補う教材や、学生の発展的学習に適した教材を作成し、管理者用のコンテンツに保存し、学生に利用するように促すこともできます。e-learning の短所 (3) の対策としては、教員が準備した教材を学習することにより、教員と学生間のかかわりをある程度は持つことができます。ただこの方法は、教員が、教えている学生に実施した場合は効果が期待できますが、それ以外の学生への効果は限定的です。本研究所では、英語 e-learning の利用を促すと同時に、本研究所主催の英語講座の開講を全学の学生を対象に開講しております。この講座は、TOEIC・IP テストの直前などは学生のニーズに合わせて TOEIC 受験対策講座となりますが、それ以外の期間は、本研究所としては、英語 e-learning を利用して自主学習をしている学生が、教員の指導を直接受けられる講座としての意味合いをより強く打ち出せるようにして行きたいと考えております。

 e-learning の短所 (4) の対策としては、Academic Express 3 の週刊英語ドリルの利用が考えられます。このコンテンツは、教材が1週間単位で切り替わります。週刊英語ドリルは e-learning での学習を習慣化させるためのツールとして利用を学生に促しています。また Academic Express 3 の Reading のコンテンツでは自然科学、社会科学、人文科学などの知的好奇心を刺激する題材が多く含まれています。面白いと思う教材であれば、読んでみようという気になるものです。学習しないという気持ちになるのは、実は興味がわかないからです。

 今後は、以上のような英語 e-learning の弱点をサポートする方法を実践しながら、PC、スマートフォン、タブレットに対応し、大学にいる時に限らず、自宅や外出先でも学びたい時にいつでも取り組める英語 e-learning の長所を伝え、本学の学生の利用を一層促すと共に、継続的に学生の意見に耳を傾けて行きたいと考えております。
著者紹介

服部孝彦(はっとり・たかひこ)

本研究所所長、本学教授。

初等・中等・高等教育を日米両国で受けた元帰国子女。言語学博士(Ph.D.)。大妻女子大学助教授、米国ケンタッキー州立ムレー大学(MSU)大学院客員教授を経て現職。早稲田大学講師を兼務。国連英検統括監修官、JSAF-IELTS アカデミック・スーパーバイザー、文部科学省WWL企画評価会議メンバーとして、我が国のグローバル化推進の中心として活躍している。元NHK英語教育番組講師。著書に文科省検定中学および高校英語教科書ほか、著書は190冊以上。日本に本拠地を置く現在でも日米間を頻繁に往復し、米国の大学での講義・講演、国際学会での研究発表を精力的にこなす。